映画「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」に学ぶこと

レンブラントフェルメールなどを所蔵する有名なアムステルダム国立美術館が、トラブル続きの改築工事で何年も閉館したままになっている。館長を始め、学芸員、建築家、市民団体など400人以上の関係者が、国立美術館の増改築問題に巻き込まれ、その騒動を映し出すドキュメンタリー映画である。

建築、自転車、アート、まちづくり、市民参加、オランダなど、私の気になるキーワードが豊富なこの映画は、知人の強い薦めで鑑賞したが、考えさせられることが多かった。

コンペで選ばれた設計案に対し、動線計画について市民の反対運動が起き、増築棟の高さが問題視された。結果、いろいろな立場の人の意見を採り入れる形となり、コンペで評価されたはずの要素が薄まった設計案となってしまった。

美術館関係者、建築家、サイクリスト、市民、皆それぞれがある意味で正論を真剣に主張する。しかし、すべての人の意見を聞いていると、コンセプトのぶれた凡庸な建物ができてしまうこともまた事実なのだ。「船頭多くして船山に登る」だ。

諸々の問題をクリアしていよいよ入札となった段階で、今度は予定価格を大幅にオーバーしてしまい、再び頓挫してしまう。

こうした問題は、この映画に限ったことではない。建築に携わる人間は、多かれ少なかれ直面することなのだ。

yanagi