出生率と出生者数

昨日、R25という雑誌を読んでいると、連載中の石田衣良氏のエッセイで「長野県下條村」が紹介されている記事を見ました。村長の伊藤喜平さんが、ベスト・ファーザーイエローリボン賞(政治部門)に輝いたとのことです。

受賞理由はコチラ


エッセイによると、下條村出生率は現在、全国平均の1.32人を軽々とうわまわる2.04人だそうです。「若者定住促進住宅」「中学生までの医療費無料」「保育料の2割引き下げ」の効果によるもので、これら政策の原資は、仕事のスピードとコストを追求するため、村役場の職員の民間研修を行い、人員が60人から34人に削減できたとのことです。また、資材支給事業により、軽微な土木作業は地元でやることでコスト削減につながったそうです。

ここまで聞くと、「よい事例だ」 「ぜひ、わがまちにも」 と、なります。


もう少し深くつっこんでみましょう。


下條村のHPに、こんなコメントがありました。

■道路特定財源をめぐる攻防について

国の道路整備単価と下條村の軽微な土木作業を直接比較したため、こんな誤解が生まれています。事例の直輸入が危険であるよい例ですね。


また、単純に出生率だけなら確かにあがってるのですが、実態はどうなのでしょう?
下條村の人口に関する統計情報を見てみましょう。


村の人口は H12 → H17 で 4075人 → 4211人 と135人増えてます。
しかし、近年の人口動態の推移を見ると、「死亡者」が「出生者」を上回る傾向にあります。
ただ、近年は「転入者」が「転出者」を上回っているので、村の総人口は増えていますね。

つまり、高齢化した村で人口を「維持」もしくは「増加」させる政策を意識する場合、単純に出生率だけを見るのではなく、出生者や転入者の「数」を見る必要があるということです。


下條村の場合、コスト削減だけではなく、住みたくなるまちの雰囲気作りによる居住者の増加と、子供を産み育てる環境整備が両輪になって、「人口」を増やしていくことがまちの力の活性化につながっているようですね。
このように、まちの力を意識してデータを見る「視点」は、カルテづくりに役に立つ気がします。